攻略アドバイス
松井 祥文 ランニングアドバイザーからの攻略アドバイス初級者編
- 第1回:「ぼちぼち」と準備を始めましょう。[初級者編]
- 第2回:「ぎょーさん」・・・あります、京都ランニングコース![初級者編]
- 第3回:「あんじょー」・・・走るためのポイントです![初級者編]
- 第4回:「おきばりやす」・・・今が頑張りどころです![初級者編]
- 第5回:「ちゃんと」・・・大会当日に向け準備をしましょう!
第1回:「ぼちぼち」と準備を始めましょう。
京都マラソンの大会当日までは、7月の時点で6か月以上もあり、まだまだ練習を積むには十分な準備期間があります。ただし、この季節は、走るにはあまり適した時期ではありません。暑さが峠を越え、少し涼しくなる9月半ば頃から、本格的に大会に向けたフルマラソンの準備=「走り込み」が始まります。でも、実は今から始めなければならない大切な準備があります。それは、「生活活動量」と言って日常生活の中でこまめに動くよう努めるということ。そして、もう一つはウォーキングや山登りなど「運動」する日を決め、少なくとも週に2日は継続実践すること。以上の2つのことがこれからの2、3か月の目標です。
フルマラソンは、42.195kmという非常に長い距離です。したがって、準備にも長い時間が必要なことは言うまでもありません。長い時間をかけて改善すべきことは、体重の管理、そして走ることを特別なことと思わない頭の切替えです。
体重に関しては、肥満の方はもちろんですが、理想体重より少し重い方でも、ランナーに関して言えば、理想体重を目標に少しずつ減量するのは色々な面でプラスになります。なぜなら、体重の減少は膝や股関節にかかる地面からの衝撃を減少させるので、「走り込み」によって起きるランニング障害(けが)を未然に防ぐためにも大変重要なポイントだからです。さらに、当然、体重が軽ければ軽いほど、脚の筋力や全身のエネルギーを浪費せずにゴールに向かっていけるようになります。また、理想体重より軽いランナーの方でも体重減少は記録の向上につながります。それは、運動生理学的には、体重が減ると、酸素摂取量が変わらなくても(心肺機能は向上しなくても)、体重1kg当たりで使うことのできる酸素量が相対的に増えるからです。
では、体重を減らすためには、日常生活の中でどのようなことを心掛けると良いのでしょうか。まずは、食事(+)と身体活動(-)のカロリーバランスを変えなければなりません。食事量を減らすか身体活動量を多くすると、体重は減少していきます。両方同時に行うとさらに減少します。ここで言う身体活動量とは、日常生活の中で手段として行われる動作「生活活動量」とスポーツなどの目的を持って行う動作「運動量」とを合わせたものです。ランナーは、減量するとき、走って運動量だけを増やすことを考えがちですが、いきなり走る量を増やすとランニング障害(けが)の発生リスクが高まるため、その前にまずは日常の「生活活動量」を高めることがポイントになります。例えば、走る習慣のある事務仕事の方よりも、走る習慣はなくても毎日忙しく歩き回っている営業担当の方の生活活動量のほうが、1週間当たりで比較すると多くなることがあります。外出の多い人は、移動の際になるべく歩くようにしていますか?事務仕事の人も、仕事の合間、休憩時にちょこちょこ動いていますか?階段を使うことは?速く歩いていますか?それら生活習慣の見直しが、体重の管理に結びつき、秋からの安全な「走り込み」の開始に繋がります。
また、体重の管理と生活習慣の見直しには積極的にツール(道具)も利用しましょう。通勤時、リュックサックスタイルで靴も軽めのビジネス仕様のウォーキングシューズを履いたり、歩数計や身体活動量計を装着すれば動く意識も向上し、毎日体重計に乗ると管理意識も高まります。
ちなみに、体重は、比較的他の時間と比べ体内の条件が一定になりやすい朝に計測することが効果的ですが、それでも炭水化物を多く含む食物の水分量や活動での発汗量で大きく変動する場合があります。毎日の変化に一喜一憂せず1週間程度の期間で変化の傾向を見ていきましょう。また、マラソンは、時間、距離、ペース、心拍数、ピッチ(脚の回転数)などの数値情報を自分で判断、分析し、それらを賢くペース配分にいかすことが重要です。数値データにランナーが関心を持つことは、ランニング自体にも良い効果を生みます。
体を動かす意識や自己を管理する意識が高まったら、次は定期的な運動の実践です。ほとんど運動していなかった人が、急に週3日、10kmずつ走るというのは気持ちと体のハードルが非常に高いでしょう。
そこで、その準備段階として、定期的に運動する日を1週間に2日程度を目標に取り入れてみましょう。ランニングの練習というのは1週間単位で、何日走る、何km走る、何回頑張るというプログラムでステップアップしていくことが肝心です。例えば、水曜日の朝に早起きしてウォーキングなど30分、日曜日は山でのハイキングを半日など、週に2日程度は、今のうちから運動スイッチを入れておきましょう。ある週に1日しかランニングができなかったら、翌週はなんとか2日頑張る。その週2日が習慣化できれば、さらに土曜にも早起きして日差しが強くない時間に30分程度ゆっくり走る、ということも加えていけば、更に秋への「走り込み」に向けての準備は整います。
さぁ、京都マラソンを目標に、「ぼちぼち」と準備を始めましょう。
第2回:「ぎょーさん」・・・あります、京都ランニングコース!
名所をめぐりながら景色を楽しみながら、ウォーキング&スローランニング!にまずは取り組みましょう。まだ長く走ることに慣れていない、どうも長く走ると飽きるなあ・・という方はランニングに集中しすぎず、他の楽しみも行いながら、その中で歩き小走り、ウォーキング&スローランニングを組み入れながら、長い時間体を動かし基礎体力を高めていくという、ファンランニングをお勧めします。
1. 堀川遊歩道~京都御苑コース
堀川通の東に沿って南北に伸びる遊歩道を、堀川御池から堀川今出川まで約2km。周りの木々と清流に包まれたこのコースは都心の中のまさしくオアシス。清々しい気分で脚も気持ち良く動くでしょう。そして堀川今出川から東へ脚を進め京都御苑へ。御苑内の迷路のようなコースは砂利道、土道と路面の変化もあり退屈もせず、広大な敷地内を駆け巡ると自然に距離も伸びていきます。
2. 嵐山周辺コース
言わずと知れた観光スポット嵐山。阪急嵐山駅から渡月橋を南から北へ渡り、商店が立ち並ぶ通りを避け、左手西に折れ、亀山公園、トロッコ嵐山駅、化野念仏寺、鳥居本(3.5km)更には清滝(4.5km)まで・・嵐山地区の西を北へ北へと案外走れるコースが続きます。
ファンランニング、快適なランニングのため、走る際の着替えや荷物の預かりにはランニングステーションの利用がお勧めです。「京都 ランニングステーション」でWeb検索すれば市内中心部や嵐山付近の施設が見つけられます。また京都市のこのページには(http://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000149824.html)ランニングステーションとしての機能を持った銭湯の情報も掲載されていますのでご参考に。
いよいよこれから距離を伸ばして行きたい、頑張るぞ!という方には、周回コースでのランニングをお勧めします。正確な距離のコースで周回を重ねます。目標の距離を決め、でも余裕を保ちながら一定ペースで走り続けることを1〜2か月、週に2〜3回繰り返していくと脚の基礎的な持久力強化に繋がります。
初心者がいきなり往復10kmのコースに出かけると、何か不調が起こっても歩いて戻ってこないといけないので、頑張り過ぎで長引くケガにつながることもあります。もし脚のトラブルなどがあった場合でも、すぐに終了できるのが周回コース。その点でも安全、安心な1〜2kmの周回コースを、初心者には特にお勧めします。
3. 西京極総合運動公園コース 1.25km
京都マラソンのスタート会場の西京極総合運動公園。この公園内のメインの陸上競技場、補助競技場、野球場に沿ってぐるりと回ります。コース幅が広くなったり狭くなったり、多少のアップダウンもあったりとメリハリのあるコースです。4周で5km、8周で10km・・と目標を定めやすくなっています。マラソン当日に落ち着いて行動するために、スタート会場全体の頭に入れておくためにも、ぜひ事前に走っておきたいコースです。
4. 宝ヶ池コース 1.5km
コースは未舗装です。細かなデコボコや傾きで微妙に足首が動き、いつもコンクリート、アスファルト道路を走っているランナーは少し走りづらさも感じるでしょう。しかしその動きが足周辺の小さな筋肉の刺激になり、いつもとは違うトレーニング効果が期待できます。
5. 二条城コース 1.9km
道路の歩道コースです。日中はお城に出入りする観光客の方がコースに溢れるため走れませんので、早朝か夜のランニングがお勧めです。毎日走っているご近所のベテランランナーも多くみられます。年配の方に抜かされても、カッ!となって決して追い付き追い越せで後を追わない様に・・(笑)ランニングは若さの体力で走力が決まるのでなく、継続的な走歴ですので。
第3回:「あんじょー」・・・走るためのポイントです!
「フルマラソンのための練習=走り込み」をいよいよ!と共通編の冒頭に書きましたが、これは42.195kmという大変長い距離に負けない脚づくり、脚を強化する練習をということです。なるべく長い期間、時間をかけて走る量を徐々に増やしていくというのが重要なことです。
今まで5kmしか走った経験のない人がいきなり練習で20kmを走り切ることは難しいですし、たとえ走り切れたとしてもその後の膝関節等へのダメージは相当でしばらくは練習できない事になるでしょう。5kmの先には必ず10kmが、10kmの先には必ず15kmが・・・ということで段階を踏んで時間をかけて脚を少しずつ強くしていくということです。
このレース3か月前の11月中旬から12月中旬までの1か月間は、週末に平日の倍の時間や距離をしっかり走り込むことを目標としましょう。例えば、水曜に30分走れているなら週末にその倍の60分間走を実施し火曜と木曜にそれぞれ8km走れているなら週末に1回15km走を実施する。週末のこの練習をロングジョグと言います。
ロングジョグは可能な限りゆっくり走ります。ゆっくり走らないと長い時間、距離は走れません!このことは、初級者には大変重要です。呼吸はほとんど変化なく、周りの景色やランナーの様子に目を配り、余裕で走れている程のラクさを感じるペースで走り出します。時間がたち距離が長くなれば、徐々に呼吸でなく脚が重くなってきますが、これが練習効果です。
ロングジョグは、前回(第2回攻略アドバイス)ご紹介した「お勧め練習その5」のような周回コースで行うことお勧めします。距離表示を確認し、1kmあたり何分何秒のペースで走っているかを把握しながら、ラクに走れているペースを体で覚えていきましょう!
練習量の増加に併行して、ストレッチもよりしっかり行い、筋肉の柔軟性を保ってランニング障害を未然に予防していきましょう。この動画のストレッチのうち、立位姿勢の種目はロングジョグの直後に、座位や横になっている種目はお風呂上りに実施しましょう。
第4回:「おきばりやす」・・・今が頑張りどころです!
初マラソンを目指している方は、まず距離に対しての不安があることでしょう。今まで10km、そして20kmと練習を積み重ね、走れる距離は伸びたけど、まだフルマラソンには倍の距離があり、果たしてフィニッシュまで脚が動き続けるかどうか…。だから、フルマラソンにできるだけ近い距離を大会までに1回は走っておきたいと思っている方も多いでしょう。スポーツの世界、特に技術が重要視される種目では、練習で出来ないことが本番で出来ることはないと言われます。
フルマラソンについて言えば、フォームなど走りの効率の良し悪しはありますが、基本的に体力勝負の種目です。ハーフマラソン程の距離を練習で走れていたら、フルマラソン本番での緊張感が体力にプラスに働いて42.195kmのゴールまで脚が動きづけることも少なくありません。ただし、もちろんその大会当日に向けて脚の状態を含めて体調を万全にしておくことが重要です。
初マラソンを目指す方は、不安感から短期間で急激に走る頻度や量を増やし、膝周辺の組織を痛めてしまうということがよくあります。そうなれば長い距離の練習も積めず走力は上がっていきません。また、大会当日までに完治せず痛みや違和感があるようでは完走も難しくなります。
初級者は不安を解消するためにやみくもに頻度や距離を増やしていくのではなく、基礎編の表の記したように段階的に無理なく、また前回に紹介したストレッチも実施して筋肉の柔軟性を保ってランニング障害を未然に予防していきましょう。
脚の痛みや違和感はないけど、走る距離がなかなか伸ばせないという方は、「ウォークブレイク」に取り組んでみましょう。これは、脚が完全に疲れてから歩いてしまうのでなく、敢えてウォーキングを早い時間から計画的に取り入れていくことです。ランニングとウォーキングでは使う筋肉の比率が異なるので、ランニングでよく使う筋肉をウォーキングの間に休ませることができます。
辛くもないのに最初から歩くことに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、初級者には、ウォーキング中に水分や栄養補給をしっかりできるなどのメリットが多く、結果的に長い距離や時間を走ることができます。「ウォークブレイク」のペース配分の一例として、7:30/km(時速8km)で9分間ランニングした後、 12:00/km(時速5km)のウォーキングを1分間行うという10分間を1サイクルとして繰り返します。この1サイクルをランニング(7:30/km、時速8km)し続けた場合と、ウォーキング(12:00/km、時速5km)を1分間取り入れた場合との差は、1サイクルでたった50mだけです。
大会5週前や3週前の3時間走に、この「ウォークブレイク」を行うと23kmの距離を踏めることになります。また、ゴール後の疲労も思ったほどないことを実感できると思います。フルマラソンでも「ウォークブレイク」を取り入れることでタイムを伸ばしたランナーもいます。制限時間内に完走できない、後半30km以降大きくペースダウンしてしまい5時間以上かかるレベルのランナーにも有効な対策練習法です。
以上・・・この時期、距離を目指して「おきばりやす」・・・京都マラソンの当日に向け今が頑張りどころです!
第5回:「ちゃんと」・・・大会当日に向け準備をしましょう!
共通編の冒頭に、大会日が近づいてくるとへのワクワク気分も・・と書きましたが、京都マラソンが初フルマラソンで、既にそういう気持ちになっている方は、以下の内容と合わせ、中上級者編の内容も参考にして大会に向け準備しましょう。
ワクワクでなく、大会が近づくにつれて逆に不安がつのっていく・・・という方は以下の内容に従って大会までの準備をしていきましょう。
今、感じている不安とは、
1)今まで練習を通じて20km以上の長い距離を、ペースを保ちながら走ることができず42.195kmの距離を走り切れるか。走り続けることができず途中から歩いたとしてもゴールまで脚が動くか、制限時間内にフィニッシュできるか・・という不安
又は、
2)練習で感じた脚の痛みや違和感が完全に治っていない状態で、その痛みがいつ出るか。痛みが出た後、それに耐えてフィニッシュまで脚が動くか、制限時間内にフィニッシュできるか・・という不安
大きくこのどちらか、又はその両方かと思います。でも、この不安を解消するために、今から無理して走り過ぎることは禁物です。
1)に当てはまる方でも、前回の表ABの範囲内で時間と距離をコントロールしましょう。大会まで3週間を切った後は、それまで最長距離を走るというチャレンジ的なリハーサルは行わないように。このようなリハーサルで痛みや違和感がでてしまい、結局大会までに完治しなかったというのはよくあることです。
2)に当てはまる方は、現時点で痛みや違和感があれば走りは極力控え、大会の4~1週間前は痛みなどが出ない程度でのランニングやウォーキングで、可能な限り体力の維持に努めましょう。
初マラソンのランナーにとって大会への準備として必要なことは、まず、脚が完全にフレッシュな状態でスタート地点に立つことです。そしてスタートラインを越えた後は、フィニッシュの42.195km先を見据えたマイペースで、前回に紹介した敢えて早い時間からウォーキングを計画的に取り入れていく「ウォークブレイク」を入れてでも、ゴールに向かって一歩一歩前進していくことです。
その過程で今まで未知だった30kmポイント越えの喜び、しかしその後に来る辛さ(決して脅しているわけではありませんが)がやってきて、そしてラスト、3、2、1kmとゴールへ近づくにつれて、その辛さがまた喜びに変化していき、そしてゴールでの最高の達成感、感動!と、初マラソンのランナーには、初マラソンでしか得られない心とカラダの変化をぜひ京都マラソン2016で十二分に感じとってください。
そしてゴール後、その喜び、辛さ、達成感、感動の経験が、更なる向上心に変わり、次回はもう少ししっかり練習できたら、もう少し大会では頑張れるかも・・そして不安もなくなり大会前からもっと楽しめるかもと、フルマラソン大会に楽しく挑み続ける気持ちが芽生えることを、京都マラソン2016のランニングアドバイザーとして祈念しています。