攻略アドバイス
松井 祥文 ランニングアドバイザーからの攻略アドバイス中上級者編
- 第1回:「ぼちぼち」と準備を始めましょう。[中上級者編]
- 第2回:「ぎょーさん」・・・あります、京都ランニングコース![中上級者編]
- 第3回:「あんじょー」・・・走るためのポイントです![中上級者編]
- 第4回:「おきばりやす」・・・今が頑張りどころです![中上級者編]
- 第5回:「ちゃんと」・・・大会当日に向け準備をしましょう!
第1回:「ぼちぼち」と準備を始めましょう。
どんなランナーにも、まずこの夏の時期から定期的に取り組んでもらいたいのが下半身の筋力強化、筋トレです。「筋トレはした方がよいのですか?」とよく聞かれますが、私は、「はい、それは絶対行った方がいいですよ」と即答します。フルマラソンを経験したランナーは実感していると思いますが、フルマラソンは脚の持久力勝負です。
ハーフ地点通過ぐらいまでは、跳ぶように軽やかに回っていた脚が、その後徐々に動きの鈍さを感じるようになり、25kmを過ぎるあたりから精一杯脚を回さないと失速しそうになると思うと、30kmからは「重さ」、「だるさ」、「痛さ」が次々と襲ってきます。それら3重苦の辛さに耐え、ゴールを目指す強い気持ちを保ち、ピッチ(脚の回転数)を落とさずゴールまで粘り抜けるかどうかで記録が大きく変わってきます。
下半身の筋肉の量が増え、筋力がアップすると、着地の衝撃に耐え得る強い脚、長く動かせる粘り強い脚に変わってきます。それが走り込みに対するランニング障害(けが)の予防、大会での記録アップに繋がります。
そのためには、まず、ランニング動作より強い刺激、過負荷のトレーニングをすることです。負荷とは、「強度」と「量」の二面(二軸)があります。筋トレは、重りや体重やジャンプを負荷にしてランニング以上の「強度」で体に刺激を与えます。その刺激(筋トレ)の後に適切な回復期間をとり、トレーニングを継続的に繰り返していくことで筋量は増え、筋力もアップしていきます。
ランナーのための筋トレ法
- ステップ1マシンの重りを負荷にした「筋トレ」で脚の筋量アップで基礎土台づくり
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脚を前に押し出す「レッグプレスマシン」で股関節周辺の筋力強化、膝を伸ばす「レッグエクステンションマシン」で太ももの前を強化、膝を曲げる「レッグカールマシン」で太ももの裏を強化。スポーツクラブや体育館のジムを利用できるランナーはこれらの種目を脚の筋量アップ目的で行います。
- ステップ2自分の体重を負荷にした「筋トレ」で走動作に関連する筋力の強化
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両足で立った状態からお尻を後ろに引き、いすに座るような姿勢を反復する「スクワット」、そのスクワット運動を片足立ちで実施する「片足スクワット」を、ステップ1の後に、または走練習で脚が疲れた後に実施すると、より走動作に近い負荷が脚にかかるので効果的です。
- スクワット
- 片足スクワット
- ステップ3ジャンプによってかかる自体重を負荷にした「筋トレ」でランニング効率の改善
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ステップ1、2を、既に定期的に実施しているランナーは、「スキップ運動」も取り入れてみましょう。膝や太ももを単に上げるのではなく、膝を前へ押し出す意識で、前へ前へとジャンプ動作を切替します。ここで重要なのは、一歩一歩大きく上へ飛ぶことでなく、歩幅は小さめに膝を前へ送る意識で、リラックスして同じリズムを持続することです。足の裏全体で着地し、足首をこねずに地面反発をいかして、ふくらはぎでなくお尻と太ももの裏の筋肉を使いながら200m程度の距離を目標にします。100mを過ぎる頃には、徐々に脚が重く感じ、ゴール後はかなり息が荒くなっている程度の強度になります。ランニングは跳ねる動作の繰り返しです。この運動で無駄なく跳ねる動きを習得し跳ね続ける脚の持久力も高めていきます。
ステップ1、2は、1種目15回〜20回を2〜3セット。また週に1〜2日の頻度を目途に継続実施しましょう。
来年2月21日の京都マラソンを目指すランナーの多くは、10月~1月にかけてフルマラソンを走り、京都マラソンでは、今シーズン何回目かの大会ということが多いかと思います。ただフルマラソンへの出場を重ねるだけでなく、目標とするフルマラソンのための準備期間を十分に設け練習を積み重ねていく、その都度、その時点の走力を短い距離の大会に出て確認していくことが必要です。
大会では頑張ります、頑張れます。したがって、記録という数値で、正しい走力が客観的に評価されます。前年の同じ時期(同じ大会)の記録や、秋口の大会、この冬の大会の記録と比べると、フルマラソンではどれくらいのペース設定を目標にできそうかを推定する判断材料に一つになります。また、日頃、1人なのでなかなか強度の高い練習ができないランナーの方も、練習の一環として、10km大会やハーフマラソンに定期的に出場すると良いでしょう。
京都マラソンに向けての大会計画の一例です。
- ・9月下旬~10月初旬/10km大会
- ・10月上旬~11月上旬/ハーフマラソンまたは30km大会
- ・11月下旬/フルマラソン
- ・1月上旬~中旬/10km大会
- ・1月中旬~2月上旬/ハーフマラソン
- ・2月21日/京都マラソン
最近では、10kmの大会やハーフマラソンも、エントリー開始から1週間程度で定員に達してしまう大会もありますので、専門サイトやランナー仲間からの情報を得ながら、大会計画を早めに確定しておきましょう。
さぁ、京都マラソンを目標に、「ぼちぼち」と準備を始めましょう。
第2回:「ぎょーさん」・・・あります、京都ランニングコース!
ビルドアップ走とは、徐々にペース、速度を上げていく練習法のことです。体力、走力の向上の他に、ペース感覚も磨きレース後半に頑張れるランナーへの体質変化に繋がります。
後半に頑張れるというのはフルマラソンでは大変重要なペース配分のポイントです。これは、後半にますます頑張るということではありません。後半頑張れるように、前半は頑張らない、余裕を持って走るということです。マラソンは42.195kmという超長距離です。絶対レース後半に疲れてきます。ラスト15km、10km、5kmで頑張れるか頑張れないかでタイムが大きく違ってきます。
そのため、練習でも後半に頑張れるよう、前半を抑えて走ることを繰り返します。更にレベルアップしていくと、前半に余裕を持ち過ぎずにある程度頑張るペース配分、ペース感覚を高め、後半頑張りぬくと更にタイムは向上していきます。これらについては次回以降、具体的な練習法の中でご紹介していく予定です。
・鴨川河川敷コース
上流に向かい北向きに走ります。例えば30分きっかりの時間で折り返し、スタート地点と同じ地点のゴールを目指します。折り返し後の南向きはなだらかに下っています。後半は脚も軽やかに動き出し自然にペースも上がるでしょう。ラスト1kmからは更にペースアップしゴールできれば少し息が上がっていますが、爽やかな達成感もわいていることでしょう。例えば往路30分、復路27分のタイムとかになれば目的通りの練習ができたということです。
フルマラソン経験のあるランナーは実感されていると思いますが、フルマラソンは、脚の筋持久力勝負です。そこで走練習以外に、筋力トレーニングも実践すると、走力アップやランニング障害の予防にも繋がります。でも、走る時間をとるのが目一杯でなかなか筋トレの時間が作れないランナーには、走練習の中で脚をより強くする方法を取り入れて行きましょう。
・伏見桃山御陵コース
京都市伏見区、京阪電車桃山南口駅から徒歩5分ほどにある230段の階段を利用した脚の筋力トレーニングコースです。走りながら筋トレもしたいと一石二鳥を目指すランナーには最適なハードコースです(笑)。私の学生時代の特訓コースでもあります。
全長100mほどの階段ですが高低差は30mほどありますので30%の傾斜率です!この階段を歩いて上るだけでも大変ですが、フル4時間30分以内程度の走力のランナーなら走って上り切れないこともありません。ランニングフォームを崩さずに淡々と一定リズムで上り、上りきった右手のスロープを階段下まで戻ると約650mです。これを繰り返す・・・一度も歩かず5周回できれば3時間30分切り、10周回で3時間切りが見えてくるかも・・!?そこまででなくても、この階段を駆けあがっていると参拝者から驚きの声が漏れ聞こえますので、つらい中でも快感が味わえる練習コースです(笑)。
20km超の長い距離を走る練習(ロング走)を、河川敷や公園内の平坦なコースで実施することが多いランナーなら、上り下りの起伏が多いコースでの練習を取り入れると、心肺機能や筋持久力についてのトレーニング効果が更に高まります。起伏ロング走を、シーズン前や目標レースの2〜4か月程前の期間に、1〜2週に1回と繰り返し実施した結果、シーズンの後半のレースで大きく自己記録を更新したランナーが私の周りには多くいます。
・保津峡駅発着起伏コース
JR保津峡駅前をスタートし、京都府道50号を西の水尾集落方面へ、さらに亀岡市への分岐・神明峠を越え、スタートから7.5km地点まで約400m上る舗装路のコースです。最高点で折り返すと往復15kmです。最高点を越えて下り、京都市右京区の奥、宕陰地区の美しい棚田や茅葺き民家を見ながら距離を伸ばし折り返す往復20km~30km(南丹市)コースならロング走練習としても十分過ぎるぐらいの負荷となります。
このコースの特徴は、なんといっても上りでの心肺のキツさと連続する下りでの脚の辛さです。ただキツい上りと言ってもペース配分さえ間違わなければ、フル4時間半以内のランナーなら最高点まで走り切れます。息が上がり心肺機能のアップのトレーニング効果になります。最高点から保津峡駅までの7.5kmはずっと下ります。下りは楽ではないの?いや延々と7.5kmも続けば太ももの前は下りの着地衝撃を吸収する作業で酷使されゴールでは筋肉疲労も目一杯感じます。
以上、今回ご紹介したコースを走り巡りながら、更に走力や目的に応じた練習も行うと、京都マラソンのレース日へ向けていよいよ準備が始まったなあと感じて頂けることでしょう。
第3回:「あんじょー」・・・走るためのポイントです!
この中・上級者編は、フルマラソンの完走経験があるランナーのレベルアップへのアドバイスであり、昨年のタイムを更新したい、この数年内でのベスト記録を出したい、今回も何時間何分を切りたい!等と具体的な目標ゴールタイムを掲げて京都マラソン当日に挑まれるランナー向けです。
共通編で、走スピードはピッチ(脚の回転数・歩/分) ×ストライド(1歩の歩幅・cm/歩)と書きましたが、自分の目標ゴールタイムをクリアできるそのスピード(ペース)を、いかに長く(何km地点まで)維持できるかという持久力がゴールタイムを決めるポイントになります。
持久力とは、心臓と肺の持久力、脚の筋持久力に分けられますが、フルマラソンを目指す市民ランナーの練習法としては、まず、脚の筋持久力の更なる強化を実践していきましょう。
練習の回数を増やす、走る時間・距離を伸ばすなどの走り込みで脚の筋持久力は高まっていきます。しかし、同じ練習を繰り返すことだけで回数や距離を伸ばそうとすると、カラダにかかる刺激(走力を向上させる過負荷という良い刺激とランニング障害に繋がるストレスという悪い刺激があります。)がパターン化され、走力アップへの刺激が少なくなる一方で、カラダの同じ部位にかかる刺激が増してきます。一生懸命頑張っているのにタイムが伸びない、いつも疲れている、脚がよく痛くなる、ということにつながります。
そこで、レース3か月前の11月中旬から12月中旬までの1か月間は特に、新たな刺激を練習に組みこんでいきましょう。起伏、階段、体重の過負荷の3つの練習を利用しながら、今まであまり使ってこなかった部位に刺激を与え、走力の下支えをする脚を強化していきましょう!また、練習後のストレッチも継続しましょう(今回の初心者編もご覧ください。)。
1.起伏ロング走
前回の「お勧め練習その5」をご覧ください。
2.階段筋トレ走
3.自体重筋トレ
第4回:「おきばりやす」・・・今が頑張りどころです!
昨年のタイムを更新したい、この数年内でのベスト記録を出したい、今回も何時間何分を切りたい!などと具体的な目標タイムを掲げている方は、大会の1~2か月前のこの時期に、フルマラソンに近い距離の30kmをペースを意識して練習に取組みましょう。これも初級者と同様にいきなり30kmペース走をするのではなく、しっかりステップを踏んで30kmまで距離を伸ばしたうえで、30kmの走ペースを段階的に上げていけば大会に向けた準備が無理なく整うということです。
30kmペース走練習で走り続ける目標ペースは、歩かずにフルマラソン完走を目指す方は、5時間切りが目標なら7:30/kmペースで、4時間30分切りは6:45/km、4時間切りは6:00/km、3時間45分切りは5:40/km、3時間30分切りは5:15/km、3時間15分切りは4:50/km、3時間切りは4:30/km、になります。このペースを目安に、1回は30km(ただし、フルの目標が4時間以上は最長3時間走)を走り、30kmを走り切った後に、どれぐらいの余裕があるか十分感じ取っておきましょう。
2回、3回とこの30kmペース走練習を実施できる方は、1回目の30km走後の体の状態を踏まえてペースを修正していきましょう。上方修正した場合でも目標ペースよりは遅く、例えば、大会で3時間45分切りが目標ならペースの5:20/kmでなく最速5:25/km程度まで。
30kmペース走は、ペースを確認しながら走りますので、距離表示があるところや、距離がわかっている公園の周回や河川敷の往復コースを選んで走りましょう。正確な距離がわかっていない場合でもGPS機能付き時計で周回、往復毎のラップペースを確認しながら走れば良いでしょう。お近くにそのようなコースがない場合は、少々遠出してでもぜひ走りやすく分かりやすいコースで選んで走ってください。30kmペース走をコース環境や時間的な余裕がないなどの理由でなかなか実施できないランナーの方は、ハーフマラソン前後を利用して30kmペース走と同程度の量の練習を行うという方法もあります。
通常、ハーフマラソンは、自己新や昨年の記録更新を目指して目一杯頑張り走力を確認する、あるいはフルマラソンの目標ペースで少し余裕をもって走り切れきれるかの確認の目的で出場します。しかし、走りこみで脚が疲れていれば、その時の走力相応のタイムが出ず正しい走力評価ができませんので、前々日、前日と走る量をかなり落として臨みます。ただ、30kmペース走の代わりとしての走り込みを目的とするなら、大会前日にロングジョグ15~20kmを走って、2日間合計で35~40kmを走ります。
あるいは1日で走力も確認し走り込みもしたいというランナーには、ハーフの大会後、その日のうちに、なるべく時間をあけずに10km程走ります。速いペースである必要はなく、ロングジョグペースでOkですので、大会会場の最寄りの駅までリュックを背負って走っても良いでしょう。
以上・・・この時期、距離にペースに「おきばりやす」・・・京都マラソンの大会日に向け今が頑張りどころです!
第5回:「ちゃんと」・・・大会当日に向け準備をしましょう!
フルマラソン経験者であるランナーの皆さんは、次の準備と対策を講じて大会に挑んでいきましょう!
フルマラソンの完走経験があるランナーは、京都マラソン2016での目標を、自己記録更新、何時間何分の壁を越えたい、昨年の記録を更新したい等、具体的な数値を設定して挑む方が多いと思います。
そこで私からのアドバイスです。この大きな目標を、この記録は悪くても達成したい下限のボトム目標から、願望がこもったストレッチ目標まで3段階の目標に広げて大会に挑みましょう!
例えば、
というように、3つのレベルの目標を設定していると、その日の体調や調子、アクシデント(トイレなど)、気象条件のマイナス要素を差し引いても、大会中に気持ちの切れない走りを最後まで続けることができます。
ひとつの大きな目標、ストレッチ目標に執着すると、その目標ペースからダウンしたとたんに気持ちが切れて大失速です。フルマラソンでは特に辛くなった後でも頑張り抜ける気力があるかどうかで30km以降のタイムが大きく違ってきます。
また小さな目標を繰り返しクリアし達成体験を積み重ねていくことが、大会後のこれからの練習へのモチベーションの維持につながり、その後の練習に継続的に取り組んでいくことができます。
最後まで目標タイム持ち続けて強い気持ちでゴールを目指しましょう!
今シーズンは暖冬傾向ですが、京都マラソン当日の2月21日はどういう天気で、どういう気温になるかの予想はつきません。1週間前からはまめに当日の天気予報をチェックしておきましょう。
当日の予想気温が低い場合だけでなく、大会中に天候が崩れた場合には、大変厳しいコース条件になります。
走力の高いランナーは薄着で走りますが、そういった日にオーバーペースから後半失速しだすと体から熱産生も一気に低下し、ますますスピード低下、そして最悪動けなくなって低体温症になるという事例もあります。
どのレベルのランナーも、ウエア、ペース配分、エネルギー補給等、体温が低下しないよう準備を万全にしておきましょう。
30kmを過ぎると、どんなランナーでも脚の疲労感を感じます。ずっしり重くなり地面を蹴る、跳ねるバネがなくなっていきます。しかし、そこからが頑張りどころということで、腕を大きく動かし、歩幅を広げようとするには全くの逆効果でさらに筋肉が疲労していきます。
ストライドが徐々に狭くなることは避けにくいことですので、ピッチ数だけは落とさず、今までのリズムを維持しながらペースダウンを最小限に食い止めるよう、脚を回し続けるという意識と強い気持ちをゴールまで持ち続けましょう! 最後の踏んばりはピッチ数の維持です!!
以上で5回にわたる私からのアドバイスは終了です。この連載のタイトルは「攻略アドバイス」でしたが、どちらかと言うと当日の京都マラソンをご自分なりに攻略するためにいろいろな情報やプログラムを提供するという形式で進めていきました。
京都マラソン2016、私も走ります。「ランニングアドバイザー松井祥文」というビブスを着けて走りますので、大会中ぜひお声がけください。当日、私からも周りの皆さん、またすれ違う皆さんに「激・的なアドバイス!」をおかけしたいと思います。
では、当日まで「ちゃんと」準備し、また体調を整え、京都マラソンのコース上でお会いしましょう!